仮想通貨の世界でよく目にする「スマートコントラクト」とは一体何なのでしょうか?
主にイーサリアム(ETH)に搭載されており、イーサリアムネットワークを使用されて発行された仮想通貨にもスマートコントラクトの機能が搭載されています。
今回はスマートコントラクトとはどのような仕組みなのか事例を含めて分かりやすく紹介します。
目次でサッと確認
スマートコントラクトとは?仕組みについて
スマートコントラクトとは予めプログラムされた契約などの処理を実行するシステムのことで、これは日本語にすると「契約の自動履行」を意味します。
決められた通りの処理と、契約の内容がブロックチェーン上に記載されることで第三者にもその契約の内容を閲覧することが可能で、改ざん不可能になることで契約の信頼性を担保することができます。
現実の契約手続きでは書面の記入に加えて、その内容を証明するために保証人や担保などを付ける必要がありましたが、スマートコントラクトを使用することでそれが不要になります。
第三者によって悪用・改ざんが不可能なため契約内容を保証する事が可能になっています。
例えば商談の契約などに置き換えると、以下のような契約が必要になります。
- 取引日の確定
- 購入代金額
- 契約内容の書類情報
- 承認・押印
- 料金の振込確認
- 未入金時の料金回収
これらを書面で管理すること無く、商談、保険、不動産管理、ゲームデータなど様々な情報を自動で管理することが出来ます。
スマートコントラクトの事例と歴史
スマートコントラクトの初期の概念は2009年のビットコインよりも古く、1994年にNick Szaboというコンピュータ科学者、法学者、暗号学者によって初めて提唱されました。
それが初めて導入された例として「自動販売機」が挙げられます。
これは機械によってお金を入れれば自動的に飲み物や食べ物が売買され、人同士が取引しなくても予めプログラムされた処理に基づいて契約を行っています。
- 商品代金分のお金を入れる
- 購入できる商品のボタンが押せるようになる
- ボタンが押すと商品は消費者に、お金は自動販売機に入る
人同士のやり取りでも最終的には商品とお金の交換によって売買が成り立っており、自動的に「買い物」を行ってくれるスマートコントラクトの事例としてとてもわかりやすいでしょう。
スマートコントラクトのメリット
複雑な契約情報も簡単に変更出来る
すべての契約情報を自動化することで、途中で不正なやり取りが行われること無く、作業時間の効率化やコスト削減にも繋がります。
現在でも住所の変更や、保険などの契約情報の変更には対面の手続きを必要とします。
保険証の提出やハンコの捺印など、アナログな仕組みで信頼性を守り不正が起きないように対策していますが、これには時間や労力を必要とします。
皆さんも市役所などに行く用事がある時、仕事の都合で平日に行けずもどかしい思いをしたことがあるかもしれません。
スマートコントラクトを使用すれば、住所の変更手続きなどもすべて自動で管理されるようになります。
ブロックチェーン上に個人情報が管理されるようになれば、別の場所に引っ越しをしてもすぐにブロックチェーン上から情報を照会して自動で変更することもできるでしょう。
仲介手数料が不要で安くなる
効率化とコスト削減だけでなく、全て無人で処理することができるので世の中の仲介業者に支払われる手数料無くすことが出来ます。
企業が運営している多くのサービスは、その企業が仲介することでサービス利用料や手数料を支払うことでその恩恵をうけることが出来ます
例えば、メルカリの場合は基本的に消費者同士の知らない誰かと商品のやり取りをすることになりますが、その場所やサービスを提供しているのは企業です。
サービス利用料として商品購入の成約時にいくらか手数料が差し引かれてしまいますが、スマートコントラクトによってすべてプログラムだけで動けばそれも不要になります。
企業や人の手を借りなくてもすべて自動的に進めば人件費のコストもかからずに済むでしょう。
改ざん不可能で信頼性の担保が可能
ブロックチェーン上に記載された情報はすべて改ざんが不可能で、後から書き換えることは出来ません。
また、世界中に暗号化されて分散管理されているので、悪意のあるハッカーにハッキングされたり第三者に無断で閲覧されることもありません。
ブロックチェーン上に情報があるという事実が信頼性の担保にも繋がります。
スマートコントラクトのデメリット
後から情報の修正が不可能
スマートコントラクトはすべて自動的にブロックチェーン上に書き込みが行われるプログラムシステムです。
そのため、記入した情報にミスがあったり書き換えたいと思ってもそれを変更することは基本的に出来ません。
自動販売機で買った飲み物を返品出来ないのと同じように便利な半面、柔軟性の部分には難があると言えるでしょう。
ここはすべてをスマートコントラクト化するのではなく、人同士でやり取りする場も同時に提供して共存共栄をはかるのがベストでしょう。
導入コストが高い
契約を自動化出来るシステムは不動産や金融、保険業界など書面での契約を取り交わす多くの業界に革命をもたらすことが出来る可能性を秘めています。
しかし、それらの商品は管理が難しく、すべてを自動化するためには情報の整備が必要になります。
「自社でスマートコントラクトを導入するにはどうすればいいのか」という問題もあり、業界ごとの参考モデルが作られなければハードルが高く感じられます。
スマートコントラクトを普及させるためには様々なプロジェクトでの採用が望まれます。
しかし幸いなことにスマートコントラクトが導入されているイーサリアムをプラットフォームとしたICOが多く出現しており、積極的に活用しようとしているプロジェクトは多数あるため、将来性には期待できます。
通貨の処理性能に左右される
スマートコントラクトははじめてイーサリアムに採用された画期的なシステムとして大きな注目を集めました。
しかし、イーサリアムは2021年1月時点で秒間10件の取引処理しか出来ないため、世界中で使われることを想定すると処理能力に限界があると言われています。
処理能力以上のスマートコントラクトの使用がされれば、うまくシステムが動作しなかったり、取引の遅れが生じる可能性があります。
しかしNEO(ネオ)やENG(エニグマ)など、イーサリアムの処理性能の低さのデメリットを補う、高性能な処理性能を持ったスマートコントラクト搭載通貨が次々と開発されています。
スマートコントラクトの使用事例
IXT(iXleder)
IXTとは元々InsureXという名前でICOを行って生まれたイーサリアムをベースに作られた仮想通貨プロジェクトです。
私達個人が契約するような生命保険のようなものではなく、保険会社と再保険会社を結ぶB2Bプラットフォームの構築を目指しています。
iXledgerのメイン機能である”保険の簡略化”はプロジェクトのベースとなっているイーサリアムの「スマートコントラクト」を活用して行っています。
私達個人の保険の契約でも複雑な手続きや契約が必要になりますが、再保険分野では会社同士の更に複雑な契約が必要になります。
保険適応も状況確認さえすれば、あとは各保険会社のルールに従って自動処理することが出来るので一気にコスト削減することが出来ます。
CVC(Civic)
CVC(Civic)はブロックチェーン上で個人情報を安全に管理して本人確認を行うことの出来るプラットフォーム「SIP」を提供しています。
GoogleやYahooなど複数のサービスでアカウントを使い分けている方向けに、セキュリティに特化したアカウントや個人情報をまとめて管理できる場所を提供します。
「SIP」では個人情報やアカウントの管理をブロックチェーン上で安全に一元管理することが出来ます。
個人情報へのアクセスや情報の管理にスマートコントラクトが使用されており、安全に使用することが出来ます。
HYDRO(hydrogen)
HYDRO(hydrogen)はイーサリアムネットワーク上で動作する、既存のプライベートシステムをパブリックチェーンに置き換えるためのプラットフォームを提供する仮想通貨プロジェクトです。
Hydroから提供されるパブリックブロックチェーンは「Raindrop(雨滴)」と呼称され、スマートコントラクト機能用いることで、透明性を保ちつつ、個人認証方式などハッキングリスクを抑えるためのセキュリティを提供します。
Hydroではブロックチェーン技術を活用することで、情報を世界中に分散管理しつつハッキングリスクを最小限に抑える金融インフラを提供します。
インフラを使用することで以下のような情報をすばやく手に入れることが出来ます。
- このアカウントは存在しているか?
- 現在の残高は?
- この取引は特定のブロックに追加されているか?
- 特定のイベントが今日このアドレスで発生したか?
これらの情報や取引内容はスマートコントラクトと言われる自動履行システムにより、予め決められたルール通りにシステムが動作します。
BITPET(ゲーム)
Bitpetはイーサリアムを使用したDAppsゲームです。
仮想空間で本人の代わりとなるアバターを作って友人と交流することが出来ます。
日本で流行っていたアメーバピグやモバゲー、グリーと似ていますね。
キャラクターたちを合成することによってゲーム内の通貨やイーサリアムを稼ぐことが出来ます。
AXIE(ゲーム)
Axie Infinityはイーサリアムを使用したDAppsゲームです。
仮想空間で「アクシー」と言われる空想上の生き物を集めたり育てる育成型ゲームになります。
アクシーの見た目は様々で猫、犬、魚や鳥などのようなバリエーションがあり、レアなアクシーや育て方で価値があがる物も存在します。
収集や育成だけでなく、アリーナで戦わせることも可能でバトルに勝利するとゲーム内の通貨やイーサリアムを稼ぐことが出来ます。
スマートコントラクトの将来性
DApps(分散型アプリケーション)
DAppsを使用することで管理者がいなくてもネットサービスやゲームなどのアプリケーションを提供することが出来ます。
アプリケーションはオープンソースでプログラミングの中身が公開されているので、第三者が改善や開発を行うことが出来ます。
ユーザーの合意によってアプリケーションが進化していくので、特定の運営や企業の一存でサービスが変化せず、常にコミュニティ主導のサービスとなります。
また、サービス内で独自トークンなどが流通しており、独自の経済圏を確立しているのもDAppsの特徴の一つです。
先ほど紹介したBITPETやAXIEもDAppsを活用したゲームです。
DAO(分散型自動化組織)
DAOとは「Data Access Object」の略で日本語にすると分散型自動化組織を表します。
管理者がいなくても自動的に動き続ける組織やサービスを表す言葉で、スマートコントラクトやDAppsもその一種と言えます。
自動販売機などは取引サービスの一つですが、もっと広く、緻密にすべての作業を予め自動化すれば組織や会社も全て自動化される可能性もあります。
しかし、スマートコントラクトはあくまでも指示された通りの動きしか出来ません、組織をどう伸ばしていくかという発想や、想定外の事象には対応することが出来ません。
問題を人間が予め予想し、プログラミングしなければスマートコントラクトは機能しません。
全てが自動で管理されている組織というのは夢がありますが、それが実現するにはまだまだ時間がかかるでしょう。
IoTとの連携
IoTとは「Internet of Things」の略で、日本語にすると「ありとあらゆるものをインターネットと繋げる」ということになります。
身近なものを例に挙げると、家電製品や車などをネットに繋げてスマホ一台で全て管理出来るような仕組みのことです。
IoTの仕組みの中にスマートコントラクトを導入すれば、走った分だけガソリンを補給したり、目的地まで自動的に走行してくれる未来が来るかもしれません。
スマートコントラクトを勉強するには
スマートコントラクトについて学ぶにはこちらの本がおすすめです。
ブロックチェーンが実現する未来だけでなく、FinTechなど今後の金融業界と仮想通貨の動向についても知ることが出来ます。
スマートコントラクトを搭載したイーサリアム(ETH)の買い方・購入方法
スマートコントラクトを世界で初めて搭載した仮想通貨「イーサリアム」はその将来性の高さから多くの取引所で買う事ができます。
イーサリアムの買い方や、取引所に登録して口座開設から購入するまでの手順を詳しく知りたい方はこちらの記事で具体的に解説しているので参考にして下さい。
投資未経験の初心者の方でも簡単に購入することが出来るので、これを機会にぜひはじめてみましょう。
イーサリアム(ETH)の関連記事一覧
特徴・将来性 | イーサリアムの特徴と将来性 |
---|---|
送金確認 | イーサリアムの送金確認方法 |
取引所比較 | イーサリアムを安く買える取引所 |
買い方 | イーサリアムの買い方・購入方法 |
レバレッジ取引 | イーサリアムFXのおすすめ取引所 |
イーサリアム(ETH)の取引所別買い方
取引所ごとのETHの買い方 | |
---|---|
bitFlyer | BITPOINT |
スマートコントラクトのあとはDappsについても覚えておくのがおすすめです。